コンテスト開催案内 完成したCM作品 「総括トーク」PDFファイル版
平成28年度CMで伝える地域自慢コンテスト総括トーク 演題「学校教育でCM制作に取り組む『本当の』意味 講演:下村健一先生(元TBSアナウンサー/ジャーナリスト)
平成29年1月29日@笠岡市保健センターギャラクシーホール
 
はい,お疲れ様でした。ほんとうによかったですね。なんだかとっても楽しい発表会になりました。
 
どの作品もすごくよかったし,開会のときに私は「ほかの作品からもいっぱい学べるからね。」って言っていたけど,いっぱい学べたでしょ。やっぱり出来上がったものを見たときに,ここは伝わった,ここはあともう一歩こうやればよかったのか,っていうことが分かるのは,すごくいい機会だったと思います。

 
◆笠岡は全国のトップランナー
 
ところで,この半年間は,別にCMづくりのプロ養成講座としてやっ
たわけじゃないですからね。なぜ笠岡市教育委員会がこれをやったのか,ってことを考えて欲しいのです。やっぱりこれからの時代は,ちょっと前までの,僕らおっさん世代が小中学生だった時期とはもう決定的に違います。みんながSNS,TwitterとかLINEとかFacebookとか,そういうもので世界中に発信できてしまう時代になったんです。できることはプラスでもあり,「できてしまう」と今表現したように,怖いことでもあります。だからこそどうやったらちゃんと伝わるのかなってことをみんなトレーニングしていかないといけない。それをCM作りっていう方法で,すごく深く身にしみこませることができた君たち9チームは,とってもラッキーだったと思います。
 
笠岡市もこれから3年間かけてこれを全部の小中学校でやるぞ,と意気込んでいます。もしそれが本当に実現したら多分全国でも初めての,ものすごくトップを走っている市ということになると思います。みなさんはこの笠岡に生まれてとってもラッキーだったと思いますよ。もう僕も3年間つきあうつもりで腹を決めていますから。また今日でほんとにただの覚悟じゃなくて,これは相当楽しくできそうだなとワクワクした気持ちになっています。
 
◆このコンテストが持つ,二つの意味
 
これからお話しするのは,まさに「学校教育でCM制作に取り組む『本当の』意味」というタイトルになっています。「本当の」ということをわざわざ強調したのはどういうことかと言いますと,今回のコンテストのタイトルにそもそも2つの意味がこもっているのです。
 
「CMで伝える地域自慢コンテスト」という名前になってますけども,「伝える」と「地域」っていうこの2つがキーワードですよね。「地域」これはもちろん「地元を知る」ということです。CMを作るっていう作業をやるためには嫌でも自分たちの足元のことを一生懸命みんな取材したでしょ。すごく一生懸命,このコンテストがなかったら,きっと一生話すこともなかったかもしれない大人たちと話をして,詳しく聞いて,そうか自分たちの街にはこんな魅力があったのかということを知りましたよね。これはとっても大きな財産です。地元の足元のことを知らない人が,今ほんとに世の中にはいっぱいいます。日本の総理大臣の顔は知っているけれども,自分が困ったときに相談しに行く交番のお巡りさんの顔は知らない。これはよく考えるとすごくひっくり返った話ですよね。やっぱり最初にまず知っておくべきは地元の情報です。そういう意味で,こうやって地元のことを知った,これはとってもみんなにとっていいことでした。笠岡市のこれからの基礎体力をつけるすごく大事なことです。子どもたちがこうやって笠岡のことを知る。だってこれからの笠岡を作るのは君たちだから。もう上の世代たち・おじさんおばさんたち,今日これを企画したような人たちは,やがてみんな引退していくんですから。次の笠岡を作るための最初のトレーニングになったと思います。
 

もう一つ。「本当の意味」というからには,2つ意味があるんですね。このCM作りっていうこともすごく大事だけども,もう一つの深い意味は「伝える」ということにあります。
 
今回ずっとやってきてみんなも強く感じてると思うけど,伝え方を学んできたわけですよね。地元のことを学んだだけじゃなくて,それをどうやったらみんなに伝わるだろうっていう,物事の伝え方を知ったっていうことはとってもみんなにとって大きな力です。つまり,このスクリーンの右は「情報の仕入れ方」=いろんな世代の地元の人たちから情報を仕入れる仕入れ方を体験しました。そして,左は「情報の出し方」=その仕入れた情報をどうやってみんなに伝えたら伝わるだろう,1分間で。その出し方を勉強しました。この2つがダブルでできる。これがこの「CMで伝える地域自慢コンテスト」のすごーく大きな魅力です。これが本当の意味なんです。だからこれを全部の学校がやるってことは,とっても大事なことだと思います。
 
◆情報の「仕入れ方」と「出し方」
 
じゃあこの2つ、「仕入れ方」と「出し方」。それぞれをちょっとずつ見ていきましょう。
 
まず,≪情報の仕入れ方≫ですけども,ここまでみんながやってきたこと,いろんなアドバイスをしてきたから,みんなそれぞれ頭の中になんとなく入っていると思うけど,

大きくまとめ直すならば,まず,一番大切なのは当然だけど「好奇心」です。本当に「えっ,それなに?」って言って目をキラキラさせて,生まれたての赤ちゃんが初めてそのものを見るような目で,もう一回見慣れているものも見てみる。「えっ,それなに?」で,いろんなことを尋ねてみる。この好奇心が情報を仕入れるときの原動力です。一番大切な,最初の力です。
 
僕はTBSで3年ぐらい面接員をやりました。まだみんなにとって就活ってのはちょっと先の話だけども,テレビ局ってものすごく大勢の人が受けに来るんですね。僕の場合はアナウンサーの採用試験の面接員になったんですけど,5,000人くらい受けに来て,そこから2人か3人くらい選ぶわけです。「どうやって選んだらいいんですか」って,僕も最初に面接員をやりなさいって言われたときにわからなくて,先輩の面接委員に聞きました。そうしたら,ベテランの人事の人はこともなげに言いました。「いや,簡単だよ。眼がキラキラしてるやつをとればいいんだ。」「いや,そんなこと言ったって。」って僕は言ったんですけど,「いや,ほんとにそうなんだよ。好奇心を持っている人は,何だろう何だろうってキョロキョロとこういう目をしてるから。外ではお日さまは上にある,室内でも天井に光があるから,こういう目をしているヤツは本当に上からの光をとらえて,反射して目が光っているんだ,物理的に。ものに興味のない人はうつむいているから,上の光は反射しないから目が光ってないんだ。だから面接室に入ってきたヤツの目をほんとに覗いて,キラキラしているかどうか見ればいいんだ。」って聞いて,あ,そんなことなのか,と結構感心したことがあります。
 
実際に、そうなんですよね。「なんだろう?」って,みんなのような小学生・中学生,まだ好奇心いっぱいなんだから,それを閉じないで,うつむいてスマホばっかり見てないで,キョロキョロしながら生きていってください。それが一番大事な第一歩です、情報の仕入れ方の。
 
そして,その後,実際CMを作っていくときに,取材の仕方とかいろいろ気が付いたと思います。それを後ほどちょっと整理して,「4つのギモン」という形でお話しします。この「4つのギモン」の言葉を覚えておけば,これから先みんなは初めての情報にインターネットで出会っても,もう二度と振り回されません。決して振り回されずに冷静に受け止められるようになります。そしてもう一つ、その土台でさらに大事なのは「想像力のスイッチ」。これも大きな3つのスイッチがあります。これについてもちょっとこの後,簡単にお話しをします。
 
そして一方,≪情報の出し方≫ の方は,「4つのギモン」に対して「4つのジモン」というのを今日覚えて帰ってください。もう全部、去年の夏以来皆には話してきたことばっかりなんで、それをまとめなおすだけだけど。情報を何か自分が人に向かって出すときに,「ちょっと待てよ」ってもう一回、クリックする前に自分に尋ねてみてください。「この4つのこと、できているかな」って。セルフチェックの言葉4つ、これを覚えて帰ってください。
 
そして「伝わるための工夫」。さっきちょっと言いましたよね,作品講評の途中で。「伝える」と「伝わる」は一文字違いだけど全然違う。「伝える」っていうことは、みんなただしゃべるだけだったら誰でもできます。「伝えてます」っていうけど,伝《え》たことが伝《わ》っているか,っていうのはものすごく重要なポイントです。これは伝わったんだろうか。そのためのいろんな工夫があります。
 
そして一番最後に,その工夫はいったい「どこから生まれてくるのか」、これをお話しします。しっかり覚えて帰ってください。
 
◆情報を受け取る時の《4つのギモン》
 
まず「4つのギモン」からいきましょう。情報を仕入れるときに必要な「4つのギモン」のおまじないがあります。この4つのおまじないをぶつぶつっと唱えながらやっていけば大丈夫。みんな「あれ?」と思っている人がいるかもしれません。これ実は,小学校5年生は国語の授業でちょうど今やっている時期なんです。光村図書の小学校5年の教科書を笠岡市立の全校で使っていますよね。その中に出てくる「想像力のスイッチを入れよう」っていう6ページの文章があります。これ、僕が書いた文章です。その中に,『 』で4つキーワードが出てきます。中学生は何の話かわからないだろうから,今からそれを出しますから,覚えて帰ってください。
 
1つめのキーワード『事実かな,印象かな?』。人からインタビューしたり,インターネットで調べものをしたり,何か情報を仕入れたときに,まず,自分でぶつぶつっとこれを呟いてください。この人の言っていることは事実かな,それとも印象かな。事実と印象って,大概ゴッチャになって一緒になって出てきてます。それをゴッチャにしてそのまま鵜呑みにしないで。「情報Aの汚れをふき取る」って言い方してますけど。例えばそうだな,このお茶の入れ物を使って話しましょう。ここにAという情報があります。こっち見て。この情報には大概,その情報を出した人の持っている印象とか意見が,表面にこびりついているんです。この表面の汚れをキュッキュッと拭き取って,中の事実をちゃんと見ましょうね,っていうが1個目のギモンの言葉。『事実かな,印象かな?』それをやって,キュッキュッと事実を出しましょう。これが一つ目です。
 
そうやって事実の部分が出たとしてもまだ,それで「はい決まり」じゃなくて,2つ目のおまじないはこれです。『他の見方もないかな?』


 
つまり「1つの見方にかたよるな」ということです。(情報Aを別の角度から見る)。いいですか,このお茶の入れ物をもう一回見てよ。印象・意見を拭き取って事実は見えたけど,こっち見て。この事実は上から見るのと,下から見るのと,横から見るのとみんな違うでしょ。これ、前にやったよね,ちょっとね。これをこうやっていろんな角度から見ることで,その事実はちがって見えてきます。「あ,こういうとらえ方もあるのか」と気づく。これはすごく大事です。一発で,「あっこれだ」って決めて,それですぐさまそれを人に伝える前に,ちょっと動かしてみましょう。
 
さて,これで偏りがなくなった。それでもまだやんなきゃいけないことがあります。3つめのチェックポイントの言葉,『何がかくれているかな?』
 
つまりこれは、スポットライトの周りを見よってことです。情報って全部スポットライトなんですよ。世の中の出来事全部をいっぺんに伝えてる情報ってないでしょ。「これは,このことを伝えよう」ってみんな決めて伝えてます。みんなが作ったCMも正にそうでしょ。ある部分にスポットライトをあてて,それを1分間で伝えたんですよね。その時にいろんなものをあきらめて捨てたでしょ。その捨てたもの,スポットライトの周りの暗がりに何があるかということを考えるんです。スポットライトが当たっているところには、必ず周りの暗がりがセットであります。そりゃそうだよね,全部明るかったらスポットライトになんないから。スポットライトをとったら周りは暗いんです。その暗い方に何があるんだろうかって考える。


だから,もう一回こっち見て。僕が持ってる、お茶の入れ物でたとえるよ。①キュッキュッて意見印象を拭き取って、事実になった。②他の見え方はないかなって、角度を変えた。でもここまでやってきたチェックは、こればっかりを見ているでしょう。でも,これの横に、Aの他にBとかCとか他のものもあるかもしれない。他のものとセットで見ると,これの意味が・姿が,変わって見えてくることがあるんです。これと並べてみたら,こいつって、こうなのか!と発見がある。それが、③何がかくれているかなっていうことです。
 
さあ,これで3つチェックしてきました。最後の一番大事なひとこと。
 
今日、5年生いたら手を挙げて。おっ,いま授業でやってるでしょ、これ。なんか聞いたことある言葉ばっかりでしょ。覚えてる?授業で出てくる4番目。最後にいちばん大事なひとことは…って言って書いてあるのは,このことです。『まだわからないよね?』 つまり「結論を急ぐな」っていうことです。これは最後の,一番大事な,自分にブレーキをかけるための言葉です。情報を簡単に決めつけて,思い込みに走らないこと。


今までの3つのチェックで,きっとこういうことなんだろうなってだいぶはっきりしてきても,インタビューやら取材やら自分の調べものやら,あるいは友達とLINEで話をしてて,聞いて,「えっ」と思っても,それをすぐ次の人にリツイートしないで,こうやってチェックしてチェックして,それでもなお最後に,「いや,まだわかんないよね」,「こんなことみたいだな」っていうくらいで止めておく。「絶対こうなんだ」って決めちゃって窓枠を鉄で固めない。固めちゃったら,明日も明後日もこの狭い窓枠から世界を見るしかないでしょ。常に新しい情報が入ってきたら,「あっそうなんだ」「そういった考え方もあるんだ」って窓枠を壊して広げていく。それが大事なことなんです。
 
以上,この4つの言葉をつぶやきながら情報をとっていくと,みんなはもう惑わされません。初対面の情報が来ても,振り回されません。これからの時代,みんな必ずインターネットの海の中へ出ていきます。小学校,中学校を出て,だんだん大きくなっていくときに,この4つのおまじないをぜひ味方にしてください。
 
◆情報を発する時の《4つのジモン》
 
そして,さっき言ったように,これからはみんなが発信できる時代になってしまいました。こんなこと10年ぐらい前までは考えなくてよかったの、子どもたちは。でも、みんな今は発信ができちゃう。何も知らずに発信して大けがをする,痛い目にあう,ということがどんどん起きてきています。
 
それを防ぐために、今度は4つの「ジモンの言葉」を覚えましょう。出会った情報に対する「ギモン」じゃなくて、自分に対する「ジモン」ね。
 
これはいっぺんに行きますよ。まず,『何を伝えたいの?』これを自分に聞いてください。「私って何を伝えたいの?」それがはっきりしていなくても,普段の会話は友達や家族としているからいいんです。友達や家族は優しいから,「あっ、この人こういうことが言いたいんだな」って,ちょっと舌足らずでも補ってくれます。でも,インターネット上の見ず知らずの相手は冷たいです。だから,中途半端な表現をしちゃうとすぐ誤解をされるんです。
 
あとから,「いや,私はそんなつもりで言ったんじゃないんです」って言ってももう遅い。インターネットでバーッと広がり始めちゃったら,もう取り返しはつきません。だから,ちゃんと出す前に,情報を出す前に自分は何が言いたいんだろう。このCMで何が伝えたいんだろう。今からブログに書くこのことで,何を言いたいんだろう。そこをちゃんと自分の胸に聞いてください。「明確さ」ね。自分の言いたいことを明確にする。
 

そして2つ目のジモンの言葉、『キメつけてないかな?』 ちゃんとさっきの4つのおまじないで,自分はちゃんと決めつけずに理解したのに,それを発信するときにせっかく自分はわかってるのに何か決めつけた表現になっちゃってないかな。「みんな言ってるよ」とかね。ほんとにみんな言ってるのとか。いろんな決めつけを,僕らは割と気軽にやっちゃいます。そうすると相手はそのまんま受け取ってしまいます。ちゃんと「正確さ」のある表現になってるだろうか。これが2つ目。
 
そして3つ目は,2つ目と一文字しか違いません。一文字しか違わないけど,とってもこれも大事です。『キズつけてないかな?』 つい,無意識にふっと使っちゃった言葉が,インターネットで広まっていく。それで誰かがものすごく傷つくかもしれません。自分には悪気がなくても,「待てよ,誰かを傷つけてないかな。そういう可能性はないかな」ってチェックしましょう。「優しさ」、これが3つ目。
 
そして4つ目,最後のとどめ。『これで伝わるかな?』 もう大丈夫と思って出すときに,もう一回最後のチェック。今日、審査の時に何回も出てきましたよね。「見る人のことを考えたら,こうするともっと良くなるよ」ってアドバイスが、3人の審査員の人たちからいっぱい出たでしょ。あれはまさにこれです。4番目の、これで伝わるかな?っていう最後のチェック。これは難しさの反対の、この問題やさしいね,と言う時の「易しさ」です。
 
この4つです。「明確さ」と「正確さ」。「優しさ」と「易しさ」。
 

この4つのチェックをかければ,みんなの情報はとってもわかりやすく相手に伝わる情報になります。これもぜひ覚えましょう。1と4は昔から大事だったんだけど,特にこれからインターネット時代になって,2と3。自分に悪気はないんだけど誰かの加害者になってしまうことを防ぐために。キメつけとキズつけをしていないか。これは本当にしっかりとチェックしていってください。
 
◆土台になるのは《3つの想像力》
 
そして,最初の方で言いましたけども,この4つのギモンと4つのジモンのもっとベースに,情報をちゃんと仕入れてちゃんと届けるために,一番土台のところで必要なのが,「3つの想像力」です。今回のCM作りでも、みんな無意識に使っていたはずの力です。
 
1つ目,情報への想像力。これは,メディア・リテラシーの話。今まで話してきたことって,難しく言うとメディア・リテラシーと言うんです。今日のイベントの上映開始前、一番最初に出たパワーポイントに書いてありましたよね。メディア・リテラシーを育てるのも目的の一つです。それはつまりこの,《4つのギモンとジモン》のことなんです。情報をちゃんと受け取って届けるためのコツ。
 
これ,例えばどんなことをやったらいいかというと,この写真のようにね,ちょっと紙をくりぬいてちっちゃい穴をあけて,そこから見えることだけで,「私は今こういう所にいます」ということを表現して、リポートしてみる。それを周りの人に聞いてもらって,どんなところにいるかというのを想像してもらう。これをいろんな方向を向いて,みんなてんでんバラバラに,それぞれリポートする。そうすると、みんな違うことを言う。その居場所の正確なイメージをちゃんとリポートできるか。小穴の中の景色からだけじゃ、できません。


ここ覚えてね。みんながこれからインターネットで見る1ページは、この紙の小穴なんです。この小穴から見ただけでは、全体はわからない。インターネットのあるたまたま覗いた1ページで,「そうなんだ」って決めつけるのは,この小穴から覗いて世界を決めているのと同じことです。だから,それを避けようというのが情報への想像力です。小窓から覗いてリポートして,聞いている人にどんな景色が伝わるかな。ということです。覚えといてね。
 
そして2つ目の想像力「他者への想像力」。相手のことなんか知らない,じゃなくてちゃんと自分事化しましょう。なんでも他人ごとにしないで,自分のこととして考える。優しさをもちましょう。自分の国が第一です,何とかファースト!とか言ってるだけで,それでほんとに世界は仲良くなれるのか,ということ。ちゃんと他の人のことも考えて,いろんな生き方があるんだという多様性をちゃんと受け容れる。CM作っててもいろんな人と出会ったでしょ。それをみんな,あっこういう生き方があるんだってちゃんと受け止めて人に伝えていく。これが2つ目です。
 
これは例えば「想像力散歩」っていうことをやってみてください。たまに,仲間と一緒に。歩きながら,これは簡単。今日だってすぐできるよ。
 
想像力のスイッチを入れながら散歩するんです。すれ違う人,あんな服装してる人は今からどこへ行くんだろう,って物語を想像してみる。太い木があった。この木はここで芽を出してから今日までになにを見てきたんだろうって考えてみる。道端にポストがあったら,今この中にどんな物語が入っているだろうって想像してみる。そうやって,物語を思い浮かべながら歩くだけで,ポケモンgoなんか持ってなくたって町のそこら中にキャラクターは隠れてますから。それを想像しながら歩くだけでみんなの想像力はどんどんスイッチが入っていきます。それを活かしながら生きていって,もっと他の人のことを想像できる人間に,これからなっていってください。
 

大急ぎで最後,3つ目の想像力。なんだと思いますか? もう一つは,特にこれから生きていく若い世代の君たちに必要な力「未来への想像力」です。未来を想い描く力。それは「最善を夢見る力」と「最悪に備える力」の2つがあります。
 
一番いいものを夢見て,そこに向かって頑張る力と,こうなっちゃったらどうしようっていう,ちゃんと悪い,いやな想像も逃げずにして,そうなったときにはこうしようって備えを考える力。この両方。これからみんなの人生は,坂を上っていく作業です。坂を上っていくときに,最善の想像力・いい想像力は,上から引っ張ってくれます。そして,悪い方の想像力は,失敗したときに後ろから支えてくれます。そういう時はこうすればいいんだよ,と心の準備をしてくれます。この2つによって,上って行ってください。
 

これはね,架空同窓会という形で,今全国でやってるんですよ。今から20年後を想像しろって言っても,なかなかみんなできないでしょ。でも,「はい,今20年後です。今までの20年を振り返って,久しぶりに会った友達に報告しましょう」ってやると結構みんなできるんです。試しに今度,仲間と架空同窓会ごっこをやってみて。20年後だっていうことにしてお互いに質問しあうの。「どうしてた?あれから?」みたいな。そうするとドンドンドンドンいろんな未来像が出てきます。そのみんなの未来像をだれも否定しないこと。お前それ違うだろって言わない。いろんな未来があるんだから。そのいろんな未来を全部認めて、そのたし算が未来なんです,本当の。どっかに未来ってものが用意されていて,「おじゃまします」ってそこに行くんじゃない。みんなのこれからの判断のたし算が、未来を創るんです。それが笠岡の未来を決める。だからこの未来の想像力はほんとに大事です。
 
◆3冊の本で、詳しく学ぼう
 
ここでお話しした《4つのギモン・ジモン》は、『10代からの情報キャッチボール入門』という本に詳しく書いたので、興味があったら読んでみて下さい。
 
それから、チラシを今日配らせてもらいました。総括トークがこんなに駆け足ではみんなに伝わらないなぁと思って,ちょっと残念なので,もし今の話もっと知りたいなと思ったら,明日1月30日講談社から『想像力のスイッチを入れよう』という本を出します。国語でみんな,5年生でやってる教科書と同じタイトルの本ですけど,ここに今の3つの想像力のトレーニングを、実際に僕が子どもたちとやってるやつを載っけた本です。この本を開いてページにスマホをかざすと動画が始まるようにしてありますから,実際の授業の様子も見られますから,ちょっとこれ見てみてください。
 
さらに、4月になったら絵本も出します。『窓を広げて考えよう』という絵本ですけど,ページにみんな小さい穴が開いたような仕掛け絵本です。その小さい穴から見た世界で,えっこうなの?と思いこんだところでページをめくると,全体がこうでした,って違うことがわかる。そんな仕掛け絵本を出します。それによって,さっきちょっと言った,インターネットの情報だって断片だよねってことをわかってもらえたらいいなって思っています。
 

◆一番大切なもの―――ルールでもワザでもなく
 
最後のまとめ。
 
最初にも言いましたけども,そういう情報の出し方,伝え方の最後の工夫。これで伝わるかなっていう最後の工夫は、どこから生まれるのか。これはルールじゃないんです。こうやって伝えましょうっていうルールを覚えてやるわけじゃないんです。今回CMをみんな作った時に、別にルールを守ってやったわけじゃないでしょ。そしてまた,ワザでもないんです。僕がTBSで先輩から教わった秘密のワザをみんなに仕込んでCMを作れるようになったわけではないです。僕がさんざん昨夏から繰り返し言ってきた,そして今日も何度も言ったことを思い出して。何を言った?
 
こういうルールだからこうしろって言ってないでしょ。このワザを使えとも言ってない。僕が結局言ってきたことは,「その情報を受け取っている人のことを考えて」って,そればっかり言ってきたでしょ。情報を受け取る人のことを考えたらこうなるよね。何のルールもワザも知らなくていいんです。ただ,親切さ,《思いやり》だけをもっていれば。徹底的に相手の身になって考えれば,こう伝えた方が良いっていうことは浮かんでくるんです。たとえば、別に「字幕は映像の邪魔にならない端に出しましょう」ってルールで決まってるわけじゃない。「これじゃあ見てる人にとって邪魔だな」っていう,見てる人たちの気持ちに立てば自然にそれは、一番良い伝え方として思いつくんです。これだけ覚えておいてね。
 
これからみんな,いろいろな情報発信をしながら生きていきます。その時に大事なのはただこれだけ。「思いやり」これだけ覚えておいてください。そしたら,この笠岡はかなり優しくていい街になりますから。ただみんなはCMを作る体験をしただけではない,っていうことです。覚えて帰ってね。
 
じゃあ本当に、1年間お疲れ様でした。どうもありがとうございました。おしまい!